3人のメイドがいた。メイド達は、ご主人様のお気に入りの壺を磨こうと火花を散らした。これを磨いた者こそが、最もご主人様に気に入られたメイドなのだ。
燃え上がるメイド3人のバトルに誰も近づけなかった。
ある日、ついに決着が着く時が来た。3人のメイドとご主人様が、壺の前で顔を合わせたのだ。
「今日こそはっきりさせてください。いちばんご主人様が気に入っているのは誰なのですか!」
「この娘に決まっている」ご主人様が指さしたのは、どのメイドでもなく、お気に入りの壺であった。
「ああ、この娘ほど官能的で美しい壺はない!」
そしてその日、お屋敷から3人の退職者が出た。
(遠野秋彦・作 ©2011 TOHNO, Akihiko)